続きはまだ書けないのですが
すみません……いつの間にか以前のレターから2ヶ月も空いてしまいました。
ひとまず簡単に書きます。
前回のレターの続きとして書こうとしていたのは、ある第一志望の大学の語学堂が受け入れてくれず、状況からしてわたしがジェンダーのありようにおいて社会的なマイノリティだということが理由だとしか思えず……と落胆し、諦めモードになった後、予算や立地などの条件で選択肢が他にほぼないなか、受け入れ不可通知の翌日にソウル大学の語学堂(大学が運営する、留学生が韓国語を学ぶための学校で、いわゆる民間の語学学校は「語学院」と呼ばれます)に連絡をし、翌々日の応募締め切りに間に合わせて、無事受け入れてもらえることになり、3月頭から韓国・ソウルに住んでいるという状況です。
その、「落とされた理由」をめぐる話を、前回の続きとして書こうと思っていました。
ただ、その精神的な疲弊と、ソウルで住むことにした住居の家賃の高さや、日本の住居を置いておくことにしたため(それを可能にしている「わたしの特権性」については、me and you little magazineでの対談連載「生きていくの大変じゃないですか?」第2回のチョーヒカルさんとの話から執筆した内容でふれています)、そこの支払いも考慮し、多めにお金を持っていこうと2月にバイトと執筆関連の仕事をがんばったのと、引き続きお金を稼いでおいて不測の事態に備えようと、2月末の渡航直前の依頼や企画持ち込みで仕事を3月にもけっこう詰め込んでしまっていたため、レターを書く余裕がありませんでした。
こちらのレターを始めたのは去年の春くらい、と記憶していたら誤りで、3月の中ごろから書きはじめたのだと、皆さんからの課金サブスクライブが継続された通知を通して再確認しました。
2月から2ヶ月も空いたし、去年の夏〜秋頃も書けずにいたにもかかわらず、こうして支援してくれていることに感謝しかありません。
このレターをはじめたきっかけは、ある友達がアドバイスしてくれたからなんですが、その友達に対してわたしは過度な甘えから去年とても失礼なことをしてしまい、反省してもしきれないけど、改めてあのときニュースレターを書くアイディアをくれたことへの感謝の気持ちがあふれています。
少し前にも仕事でいっしょになった方と個人的にやりとりをしていて、「自分はいい加減だ」と言ったところ、「そうは見えない」と言われたように、個人的な付き合いのない・薄いみなさんからどう思われているかわからないんですが、感情の浮き沈みは激しいし、時間割もできないし、めちゃくちゃでちゃんとした大人ではありません。
責任感もなく、他人を簡単に傷つけてしまうし、と羅列しておいて「わかってる」とアピールすれば免罪されるわけでもないものの、差別意識も内面化していると思います。
ちゃらんぽらんでもいいじゃないかと思う一方で、いや、他人を傷つけてそのままでいいわけではないだろうとも思うし、答えがないままずっと混乱状態が続いている。
ひとまずPt.2 ソウルでの生活ですが、先述したように、書き物関連の仕事をけっこう持ってきてしまったのと、お金がない(1日2000円以内で過ごそうとしています)のに、住居がコリビングの施設で、共用キッチンがあまり充実しておらず、かつ個室にIHクッキングヒーターなど調理系電化製品を取り入れるとお金がかかるし、一旦3ヶ月の短期滞在としているため持って帰っても使えない物が増えるのを避けていて、自炊ができてなくて外食が続いているというのもあり、予想以上に経済的に圧迫されているから、出かけられておらず特別に紹介できるような話があまりありません。
コリビングは、これは最近、特にソウルで若い人が賃料や保証金の高さから住居を借りられない、または借りられても3坪や4坪(10〜15平米弱)程度のせまい部屋という、住居問題から市内に増えている、複数人で居住空間と仕事空間を共有するという考えの施設です。
ちなみに、ソウルの住居問題については、チョッパンと呼ばれる1坪程度の賃貸居住空間と、若者に広がる実質的に新手のチョッパンについて、韓国の新聞記者が取材し、執筆した『搾取都市、ソウル』(イ・ヘミ著、伊東順子訳、筑摩書房)に詳しいので、ぜひ読んでみてください。
こちらの文春の紹介記事が、本書のさわりも読めるのでおすすめです。
この本を読んでいるとわたしは、日本においては、日本語から離れないともう無理と思うほどに厳しい状況に置かれているマイノリティである一方で、円安が進んでいるとはいえ、まだまだ日本の稼得でギリギリの生活水準でもソウルで安全な居住空間に暮らせ、韓国語を学びに行けるという意味で「恵まれている」ということを思い知らされます。
1ヶ月と少しの滞在で、食事、スーパーや市場(八百屋など)への買い出し、カフェでの注文と言った、それほど会話の往復がなくても済む、生活周りでの韓国でのやりとりには不自由しなくなっています。
この施設ではゴミ出しをスタッフがやってくれるものの、施設内のゴミ置き場にゴミ出しする際も、分別のためにコンビニなどで専用袋を買わないといけないんですが、店頭には置かれていないためそういったものを出してもらう依頼や、コーヒー豆を買うときに豆の特徴を尋ねることや、レジ袋を不要と言ったりレシートをくださいと言ったりするようなときに使う単語や慣用句には、もう慣れてきたところ。
書き取りの勉強もしているんですが、それだけでなく、身近で、見かけたり聞いたりすることのある言葉のほうが、覚えやすい。
ただ、やはり5月初めに終わる予定の学期を前に、そこまでで果たして友達と雑談程度でもやりとりできるようなレベルに達するかというと、それはないだろうなと予想ができています。
それで、7万円程度の受講費ですが捻出できなさそうというのがあって、来期のコースにも申し込むかどうか悩んでいるところです。
ただ、コリビングのような便利さや安全性はなくても、今より賃料が数万円下げられるようなワンルームアパートを借りられたら、6月からの10週間の語学堂のコースにも行けるかもしれないので、その可能性を探っているところです。
こういう語りにおもしろさがあるのか、何か有益な示唆が得られるのかわからないですし、定期的に書けてもいないのでこういうことを書くのが心苦しいのですが、このレターに限らず、わたしが書いているものに価値があると思ってくれるようならその成果への価値づけや応援の意味も込めて、有料のサブスクライブに切り替えてくれる人がいればとても助かります。
2月から公開された、オンラインで読める文章や記事、ラジオ出演のポッドキャストについてお知らせします。
前回のレターでお知らせしたものと重複もあります。
三宅唱監督『夜明けのすべて』インタビュー。
「恋愛」ではない人同士のつながり、ふたりを見守る人々
(CINRA)
『アカデミー賞』主要候補作をクィアの視点で読み解く。
『落下の解剖学』『哀れなるものたち』など
(CINRA)
「不適切にもほどがある!」への違和感 すっぽり抜け落ちたものとは
(朝日新聞 Re: Ron、インタビューをもとにした記事)
チョーヒカルさんと話したい。「生きていくの大変じゃないですか?」
2019年からNYに移住。日本に生まれ育ち、国籍は中国というマイノリティ性から考える
(me and you little magazine)
「ニュースコメント、2月のおすすめコンテンツ(『夜明けのすべて』、劇団「コンプソンズ」について)」
(TBSラジオ「荻上チキ・Session」19時台「Frontline Session」)
「クィア視点でみる第アメリカ・第96回アカデミー賞」
(TBSラジオ「アフター6ジャンクション 2」)
(その直前に、しまおまほさんの「月刊しまおアワー」のモノマネ特集にかけた、モノマネトークにわたしも参加しています。本当に楽しかった!)
「ニュースコメント、非規範的な家族をめぐる映画作品について」
(TBSラジオ「荻上チキ・Session」19時台「Frontline Session」)
「人権TODAY特別編 ダイバーシティ・トーク」第1回
(TBSラジオ、MC:鈴木みのり・南部広美、ゲスト:井手上漠)
「私と宇多田ヒカルの25年」前編・後編
(あしたメディア by BIGLOBE、クラーク志織さん、下地ローレンスローレンス吉孝さんと宇多田ヒカルに関する鼎談)
4月もCINRAで映画についての記事が1本公開される予定があるのと、me and youでの連載を更新できるようがんばっているところです。
「ある第一志望の大学の語学堂が受け入れてくれず、状況からしてわたしがジェンダーのありようにおいて社会的なマイノリティだということが理由だとしか思えず」
に関する内容は、まだ「続き」として書くつもりなので、気長に待ってもらえるとうれしいです。
ヘッダの画像は、ソウルに来てすぐ、日用品としてD&Depertment Seoulで買った、韓国の대일화학というメーカー製のプラスチックのボウル。
中のイチゴは現在まだ旬の時期で、歩いて20分くらいの市場にある八百屋では、4000〜9000ウォン(450〜1000円)程度の幅で、だいたい40粒くらい入ったパックが売られていて、円安は大きいものの量を考えると日本より安くて、おいしいフルーツが買えて助かっています。
金柑はもうシーズン過ぎたのかな、と思っていたら、先週いつもの八百屋に50粒ほど入った袋詰めが4000ウォンで売られていたので、数週間ぶりに買いました。
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